壁になるスズ、自己犠牲の亜鉛。トタンとブリキの違い

トタンの屋根やブリキのおもちゃって昔はよくあったんですけど、今は見ることが少なくなりましたよね。

だからこそ、高校化学でトタンとブリキの違いをやったときにイメージがつきにくい。
両方鉄を金属で覆って鉄がサビるのを防いでいるんですが、その防ぎ方がトタンとブリキで全然違うんですよね。

そして、そこには金属たちによるプロフェッショナルの流儀があるのだ。
ということで早速やっていきます。

サビるとは?

まず、そもそもとしてサビるってなんぞやというお話なんですけと、このサビは酸化という現象なんですね。

酸化というのは簡単に言ってしまえば、物質が酸素と結びつくこと。
厳密にいえば、酸化の定義は複数あるんですがここでは割愛します。

たとえば、何かが燃えるのも酸化の一つです。
化学的には何が起こっているかというと、
炭素 C + 酸素 O2 = 二酸化炭素 CO2
この時、炭素という物質に酸素がくっついてますよね。
これが酸化というわけです。

で、サビるという現象はこの酸化の一種なんですね。
そしてサビてしまうと金属は別の物質に変わり、脆くなってしまいます。

もともと金属は金属結合という原子の結ばれ方をしていて、これには強くてしなやかという特徴があるのですが、酸化で金属結合が壊れてしまうので、必然的にこの強くてしなやかな特性も失われるというわけです。
真面目な優等生(金属)が不良の友達(酸素)に誘われて素行が悪くなる(酸化)みたいな

なので金属を長く使いたいならできるだけ酸素と触れさせず酸化しないようにしなければいけないわけですが、当然真空パックの中に金属を保管してたら使えません。
そこで金属の表面にコーティングをすることで酸化から守ってあげるわけです。
それがトタンやブリキなんですね。

言ってしまえば、ボディーガードです。
真面目でかわいいうちの金属ちゃんをどこの馬の骨とも知らない男から守るためにSPをつける。

これがトタンやブリキがさびにくい理由です。

同じSPでも仕事の仕方は大違い!

さて、サビの説明が終わったので本題に入ります。
トタンとブリキは両方とも鉄の上にメッキをして酸化を防止してるのですが、どの金属をボディーガードにするのかが違います。

トタンは亜鉛 Zn ブリキはスズ Sn

亜鉛は自己犠牲型、スズは防壁型。

サビやすさの指標としてイオン化傾向というのがありまして、左に行くほどさびやすいです。

(サビやすい) LI > K > Ba > Ca > Na > Mg > Al > Zn > Fe > Ni > Sn > Pb > (H2) > Cu > Hg > Ag > Pt > Au (サビにくい)

これを見ると亜鉛 Zn は鉄 Fe よりさびやすく、スズ Sn は鉄 Fe よりさびにくいことが分かりますね。

では、この2種類の金属をそれぞれ鉄のボディーガードにするとどうなるか?

まず、スズ Sn は鉄よりさびにくいので、酸素がやってきても門前払いしてくれます。
ですが、表面にキズがついてスズがはがれると防壁がなくなるので鉄は酸素の魔の手に落ちてしまいます。

一方、亜鉛 Zn は鉄よりさびやすいので酸素が来るとすぐにサビてしまいます。
一見するとスズの方が優秀に見えるのですが、亜鉛にも強みがありまして、それはキズが付いたときに発揮されます。
表面にキズが付くと鉄が露出してしまうわけですが、この時、亜鉛が代わりに犠牲になってサビてくれるのです。
こうすることで、亜鉛の犠牲の上に鉄は平穏な日々を送ることができるんですね。

進撃の巨人で例えると、スズが巨人から守ってくれるけど破壊されると弱いウォール・マリアで亜鉛が市民の代わりに犠牲になる調査兵団って感じでしょうか。

亜鉛「鉄に触れたければ、まずは俺を殺していけ」

って感じでカッコいいので、私は亜鉛推しです。

ブリキはスズ Sn 、トタンは亜鉛 Zn をメッキするわけなので、ブリキは酸化に強いがキズに弱い、トタンは酸化に弱いがキズに強いということになります。

なのでブリキはキズが付きにくい缶詰の内壁、トタンはキズがつきやすい屋根なんかに使われるんですね。

まあ、ただ現代だとより耐久性が高い合金やコストの低い素材が出てきてるので、シンプルなブリキ・トタン単体で使われることは少なくなってきてます。

それでも完全にはなくならないので、今でも私たちの生活はこのボディガード達に守られているのである、というところで今回は以上です。

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